2019年10月25日
第298日
あなたのもっとも価値ある財産
スコットランドの詩人でありロマン主義作家として歴史小説で名声を博した初代准男爵サー・ウォルター・スコット(1771-1832)は死の床で、大いなる友人であり義理の息子である、J.G.ロックハート(のちに彼の伝記を書いた人物)の方を向いて「あなたは『その本』を私に読んでくれるか?」と言いました。ロックハートはスコットが偉大な作家であることを知っていましたから、彼が言っている本は彼が書いた数ある本のうちどれだろうかと考えました。そこで「どの本ですか?」と尋ねました。
「どの本だって?」とスコットは返答すると、「ただ一冊の本だよ。聖書を持って来なさい。」スコットは地上の最期の瞬間、神が彼に言わなければならないことばによって慰めと励ましを受け取ったのです。彼の最期の言葉は彼の最も価値ある財産を指しています。
使徒パウロの場合、私たちは彼の最期の言葉を正確には知りません。しかしながら、私たちは彼の最期の記録された言葉を持っています。それらは今日の私たちの箇所に記されています。彼が書いた、最後の手紙の締めくくりに、「私は勇敢に戦い、走るべき道のりを走り終え、信仰を守り通しました。(2テモテ4:7)」とパウロは書きました。私たちは彼のイエス・キリストとその言葉への情熱を見ます。パウロの全生涯はイエスの良い知らせを他の人々に告げることでした。彼の最後の言葉はテモテにも同じようにするようにと勧めています。
神の言葉を愛する
詩篇119:97-104
神なしでは、私たちの人生は意味をなしません。私たちは神の言葉を読む時に、自分たちの人生の意味と目的を理解するのです。「あなたの指導があってこそ、私は人生を理解する。(104,MSG訳)」これより重要なこと、あるいは価値あることは他にありません。
戴冠式に際して、女王陛下は一冊の聖書をこの言葉を添えらてて受け取りました。「我々は陛下に、この世界が手に入れることのできるもっとも価値あるこの本を贈ります。」
詩篇の作者は書きました。「どんなにか私は、あなたのみおしえを愛していることでしょう。(97a)」彼は言います。「私は一日中、それを恭しく思い巡らせます。(97b,MSG訳)」彼は書きます。「あなたの言葉は厳選された、味わい深きもの。私はそれらを最高の家庭料理として好む。(103,MSG訳)」
神の言葉を愛し、思いを潜める結果として、あなたに賢さ(98)、悟り(99)とわきまえ(100,104)が与えられます。「私は、自分の教師よりもさらに賢くなります。(99,MSG訳)」それはあなたがすべての悪の、間違った道からその足をしっかりと守ってくれるのです(101,104)。
祈り:主よ。あなたの言葉が私に知恵、洞察、理解をもたらすことを感謝します。みことばを愛し、思いを潜め、従うことが出来ますように。
神の言葉を告げ知らせる
2テモテ4:1-22
使徒パウロは「メッセージを告げ知らせよ(2a,MSG訳)」と勧めます。この箇所は、そうするための方法についての具体的な助言に満ちています。
1.自分も加わる
パウロはテモテに「私はおごそかに命じます。(1)」と書きました。パウロはテモテに伝道者そして説教者なるように命じたのです。新約聖書に従えば、これはまた、すべてのクリスチャンの務めです。
2.イエスについて語る
パウロは「みことばを宣べ伝えなさい。(2a)」と言います。ここではギリシャ語の「ロゴス(logos)」が用いられています。これはヨハネ1:1でイエスを指して用いられている語です。良い知らせとはまさにイエスそのものです。
私たちが「説教」という言葉を聞くとき、ローブをまとった人が教会の敷地の中ではっきりと確信をもった信者のグループに語っているようなものとしばしば考えがちです。パウロがここで用いているのは、王の使者が王からの使信を人々に発布するという意味の言葉が用いられています。それは「最新の」役立つメッセージなのです。あなたは狭い意味での「説教者」ではないかもしれません。しかし、あなたはイエスの良い知らせを宣言する「王の使者」となれるのです。
3.準備しなさい
あなたの信仰について語るように、神があなたに与えたあらゆる機会を活用するために準備し備えることは大切です。パウロは「時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。[準備しなさい,NIV訳](2テモテ4:2)」と書きます。すなわち、それが都合が良い時でも良くない時でもということです。彼が用いた「準備する」という語は軍隊を暗示します。パウロが言っているのは、当直であっても、待機中であっても、あなたの持ち場を離れずにいなさい。すぐに配置に就くことが出来るように、準備しなさい。ということです。
4.全人的に語りなさい
パウロのメッセージは全体論的です。
・それは思考に訴えます(5)。彼は「正しなさい(2,NIV訳)」と言います。それは「証明する」とも訳せます。私たちは福音を「注意深く指導して(2,NIV訳)」教えるべきです。私たちが福音を提示することは内容を欠いたものであってはなりません。パウロのメッセージは証拠と理由に基づいていました。実に、パウロはテモテに「冷静さを保ちなさい(5,NIV訳)」と言っているのです。
・それはまた、心と良心に訴えます。パウロは「責め(2)」と言います。根拠だけでは不十分です。心を変えることが要求されるのです。
・最後に、それは意思に訴えます。「勧めなさい。」私たちは「寛容を尽くし(2)」人々に寄り添って、彼らを助けることが必要です。これはイライラしたり、あきらめたり、救いようのない人間だとみなしたりしない精神です。
5.真理を語り続ける
あなたは聴衆が聴きたいことに、あるいは彼らがもっと応答してくれるように内容を変えるという誘惑に遭うかもしれません。しかし、あなたが受け取った同じメッセージを伝え続けなさい。ある人々が「堅い教え」よりも「霊的なジャンク・フード、彼らの想像力をくすぐり、人目を惹くような主張」を好むかもしれないという事実があったとしても(3,MSG訳)、福音の真理を語り続けなさい。
6.やり続ける
パウロはテモテに「どのような場合にも慎み、困難に耐え、伝道者として働き、自分の務めを十分に果たしなさい。(5c)」と書きました。他者に告げ知らせることは神の前にあなたの責任です。イエスは裁きのためにもう一度戻って来られます。そして治めます(1)。今あなたがすることが、永遠の結果をもたらします。あなたはやがて申し開きをしなければならないのです。
それゆえに、困難に耐えることを意志しましょう(5)。もし、あなたがメッセージを伝えるなら、あなたは誤解され、不正確に受け取られ、誤った解釈をされるでしょう。パウロはデマスに見捨てられました(10)。彼は銅細工人のアレキサンデルに強く反対され苦しめられました(14)。パウロが最も助けを必要としていたとき、彼の為に立ち上がる者はいませんでした(16)。
あきらめてはなりません。パウロがテモテに書き送ったことばを、あたかもあなたに書き送ったもののように聴きなさい。「良い知らせをまき散らすことをあなたの生涯の務めとしなさい(5,JBP訳)」これがパウロがしたことです。彼は「注ぎの供え物(6)」のように注ぎだされることを望みました。
今、パウロはテモテに言います。「あなたが引き継ぎなさい。私は死に行く者です。私の命は神の祭壇にささげました。これこそが走る価値のあるレースなのです。私は、どんな道でも信じて、ゴールを目指して激しく走ってきました。今、すべてのものが過ぎ去って叫びます。― 神の称賛!大丈夫、神は正直に裁く。神は私にだけ正しいことをするのではなく、彼の到来を熱心に待つすべての人々にとって正しいことをなさるのです。(6-8,MSG訳)」
7.主があなたのそばにいることを知る
あらゆる反対や困難にもかかわらず、一つのことがすべてに変化をもたらします。「主は、私とともに立ち、私に力を与えてくださいました。(17)」これこそが「私を通してみことばが余すところなく宣べ伝えられ、すべての国の人々がみことばを聞くようになるためでした。(17)」パウロは、たとえ死の脅かしにその時直面していたのですが、自分の将来について確信を持っていました(18)。パウロのテモテへの、そして彼と一緒にいた他の信者たちへの大いなる願いは、彼らがイエスと親密に結ばれることでした。パウロの最期の言葉はこれでした。「主があなたの霊とともにおられますように。恵みが、あなたがたとともにありますように。(22)」
祈り:主よ。私が人々にイエスについての良い知らせを告げる時、私一人だけではないことを感謝します。― あなたが聖霊によって私と共に行かれるからです。それを忠実に為すことが出来ますように。良い闘いを闘い、信仰を保って、ゴールを切ることが出来ますように。
神の言葉を宣言する
エレミヤ51:15-64
あなたは、自分の置かれた状況に無力感を覚えったことが今までありますか?時々、神や神の民に反逆する力が私たち以上い力強いと思えることがあります。これはエレミヤの時代に、神の民が当時のもっとも強大な帝国、バビロンに対決しなければならなかった時の状況そのものです。
この困難に際して、エレミヤは主の言葉を、彼の生涯の最後の最後まで宣言し続けました(25-26、39、48、52-53、57-58)。私たちは死とパウロの最後の言葉を読みました。今、エレミヤの最後の言葉へとやって来ました。「ここまでが、エレミヤのことばである。(64)」
エレミヤのメッセージはこうでした。神はすべて力強い。「神の力によって、地は創られた。神の知恵はこの世界を形作った。神は宇宙を創造した。(15,MSG訳)」このすべて力強い神はあなたのそばにおられます。「私はあなたのそばにいる。あなたの主張を支持する(36,MSG訳)」それゆえ、神は言います。「希望を失ってはならない。あきらめてはならない。(46,MSG訳)」。
当時最強に見えたバビロン帝国は、かつてそれ以前の他の帝国と同じように、崩壊しました。神の民はただ生き残っただけでなく、彼らは成長し続け、栄え続けたのです。
エレミヤはメッセージを巻物に綴りました。彼は「これらすべてのことばをよく注意して[声に出して,NIV訳]読み(61)」と命じました。エレミヤは、主の言葉を聞き、生涯にわたってメッセージを人々に語り続けた忠実な預言者でした。
祈り:主よ。イエスについてのメッセージが私の人生を変えたことを感謝します。そして、それがこんなにも多くの人々の人生を変えるのを見る特権にあずかっていることを感謝します。私があなたの言葉を大胆に、一生の最後の最後まで語り続けることが出来ますように。アーメン。
H.K
References
David M. Atkinson, Leadership – By the Book, (Xulon Press, 2007) p.xiv